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空が弧を描く頂上
 
隠れたわが街の冒険家
 わが家の隣の住人上村哲夫さんのご子息博道君(37)は相模原に住んでガードマンの仕事をしながら地球上を飛び回っているが、これほどの冒険家とは知りませんでした。
 昨年春ごろ彼と会って山の話、オートバイの話などを聞き、なんと勇気ある生き方だろうと感銘を受けました。その後メールの交信を続けていますが短歌の話、鴨居小学校の三年生から六年生まで百七十人の前で講演して子どもたちに多大の感動を与えたことなども知りました。「山と渓谷」三月号の特別企画として健脚コースを極める彼の記事が紹介されています。
 ここで彼の人生観を紹介します。
 大学二年生のとき、オートバイに乗って、初めてツーリングへ行った。伊豆最南端の石廊崎から水平線を眺めながら、「どれだけ世界が広いのだろうか」と無限の可能性を感じて、果てまで走ってみたくなった。
 好奇心にまかせて、日本中をオートバイで旅した。美しい景色だけでなく、多くの出会いもあり、充実していた。しかし、日本だけでは物足りなくなった。一度きりの人生、悔いなく生きたかったから、思い切って海外に舞台を広げることにした。
 二十五歳の時、働いたお金とオートバイでアフリカのサハラ砂漠の地平線を眺めた時、アクセルを開けながら、感動して泣いた。一年余りアフリカを旅してから、山登りに転向して、三十三歳の時、世界最高峰のチョモランマ(八、八五〇メートル)に登頂した=写真
 登頂したときは、世界で一番高い山だけに、空が弧を描くように広がっていた。しかし、登って来た道を降りなければならないことに気付いたとき、手放しに喜んでいられなかった。遭難のほとんどは、下山中に起きている。本当の勝負だと感じた。
 今は、北極点にも挑戦してみようと思っている。
 人生の可能性は信じられるけど、果てはあるのだろうか。
=横須賀市久里浜、前川早之(75)
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